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ドクター&ナースのつぶやき

令和8年10月号


独居高齢者へのサポートについて
「一人でも、この家で暮らしたい」―訪問看護の現場から―                         

                                     はろうず訪問看護ステーション
                                           管理者 松嶋秀明  

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 訪問看護をしていると、一人暮らしの高齢者のお宅へ伺うことは珍しくありません。以前に比べても、独居の方を支援する機会は増えてきたように感じています。
 年齢を重ね、病気が進んだり介護が必要になったりすると、「一人暮らしだから、そろそろ自宅では難しいのでは」といった話が出てくることがあります。
 確かに、一人で生活することにはいろいろな心配があります。転倒したらどうするのか、薬はきちんと飲めているのか、食事や水分は取れているのか。病状が進んでくれば、誰もいない時に急変したらどうするのかという心配もあります。
 私自身、訪問先から帰る時に「このまま一人にして大丈夫だろうか」と考えたことは何度もあります。訪問中は状態が落ち着いていても、私たちが帰れば、また一人の時間になります。だからこそ、血圧や体温だけではなく、食事量や排泄、歩き方、薬の残り方、部屋の様子、何気ない会話や表情まで見るようにしています。いつもと何か違う。その小さな変化に気づくことが、独居の方を支えるうえではとても大切です。
 長く訪問看護を続け、多くの方の在宅療養や看取りに関わってきた中で感じるのは、「一人暮らしだから」という理由だけで、自宅で暮らすことを諦めなくてもいいのではないかということです。
 病院から退院してくる時も同じです。退院前のカンファレンスでは、医療処置や病状を確認するだけではなく、「家に帰って実際にどう生活するのか」を考えます。食事はどうするのか、トイレまで行けるのか、薬は管理できるのか、夜間に何かあった時はどうするのか。病院ではできていたことが、自宅に戻ると難しいこともあります。
 それでも本人が「家に帰りたい」と希望されるのであれば、「無理だろう」と考える前に、何があれば帰れるのかを考える。それが訪問看護の仕事だと思っています。
 病状が進み、最期の時期を迎えた方に関わることもあります。周囲から見れば入院した方が安心と思われる状況でも、「できればこのまま家にいたい」と希望される方もいます。
 そんな時は、主治医やケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師などと連絡を取り合い、訪問回数を増やしたり、薬や医療処置の方法を見直したりします。また、状態が悪くなった時に救急車を呼ぶのか、病院へ行くのか、それともできるだけ自宅で過ごすのか。本人が自分の思いを伝えられるうちから話を聞き、関係者で共有しておくことも大切にしています。
 はろうず訪問看護では、24時間365日連絡を受けられる体制をとっています。夜間や休日に連絡が入ることもあります。電話で様子を確認し、必要であれば夜中でも訪問する。主治医への連絡が必要なのか、もう少し自宅で様子を見ることができるのか。その場その場で判断します。
 こうした経験を重ねる中で、私たちが考える「安全」と、ご本人が望む「生活」は、必ずしも同じではないと感じるようになりました。
 もちろん、転倒や急変は心配です。しかし、リスクをすべてなくそうとすることで、その人が大切にしてきた暮らしまで失ってしまうことがあります。
 長年暮らしてきた家で、いつもの場所に座り、好きな時間にテレビを見て、自分のペースで一日を過ごす。私たちには何でもないように見えることが、その方にとっては大切な日常です。
 そして私は、「独居」と「孤立」は違うと思っています。
 一人で住んでいても、訪問看護師が訪ねる。ヘルパーが来る。ケアマネジャーが電話をする。主治医や薬剤師ともつながっている。必要であれば地域包括支援センターや地域の方々にも協力してもらう。そうやって人と人がつながることで、一人暮らしを地域で支えることができます。
 訪問看護は、病気だけをみる仕事ではありません。その人の家に入り、その人がどんな暮らしをして、何を大切にしているのかを見る仕事です。そして、医療と介護だけでなく、必要な人と人をつないでいくことも、私たちの役割だと思っています。 「一人だから無理」と最初から決めるのではなく、「一人でも、どうしたらできるだろう」と考えてみる。
 もちろん、すべてがうまくいくわけではありません。私たちも迷いますし、時には入院や施設を選択した方がよい場合もあります。それでも、まず本人の思いを聞く。そして、その思いを支えるためにできることを一つずつ考える。
 一人暮らしであっても、ひとりにしない。
 それが、これまで私たち「はろうず訪問看護」が現場で大切にしてきたことであり、これからも変わらず大切にしていきたいと思っています。

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