ドクター&ナースのつぶやき


                              令和5年9月号

    暴力・ハラスメント対策について

健和会訪問看護ステーション・のぞみ

所長 久保 敦子



 こんにちは 訪問看護ステーション・のぞみは小倉北区の大手町にあります。平均年齢48歳の計11名の看護師が、門司区、小倉北区、小倉南区を拠点に訪問看護を行っております。

 「ハラスメント」は、発言や行動によって相手を不快な気持ちにさせる行為です。訪問看護は一人で利用者の自宅を訪問するため、利用者や家族からハラスメントを受けやすく、訪問看護師が申告しなければ、発覚しにくい環境にあります。これまで、契約書にハラスメント・暴力について明記し、利用者へ説明をしていましたので、当ステーションでは無縁と思っていました。しかしながら、今回の事例について、管理者として対応は適切だったのか、振り返りましたので報告します。

 事例は70代のご夫婦で、夫は要介護2、週2回の状態観察で訪問。妻は要介護5、状態観察で毎日訪問していました。夫は既往に心不全、妻はアルコール性肝障害、薬物依存症があり、夫と喧嘩するとアルコールを摂取していました。夫は看護師に対して攻撃的な口調はありませんでしたが、自分の意にそぐわないことがあると、妻に暴言をはいていました。妻は、夫と喧嘩すると、アルコールを摂取し、普段より夫に対しても喧嘩口調で、内服を服用しないことが多く、日頃から看護師に強い口調でクレームをおっしゃる方です。包丁をキッチンにしまっても、いつの間にか布団の下に隠しておられました。夜中に夫婦喧嘩をして、緊急携帯に電話があり、夫婦喧嘩では訪問できないことを伝えると、何十回も電話してこられます。たばこの購入依頼を断ると、看護師が泣くまで大きい声で怒られます。逆に、お惣菜や野菜を買ってきては、看護師に持って帰るようにおっしゃいますので、お断りすると暴言を浴びせられます。このような事が日常茶飯事で、ケアマネジャー、保護課、主治医に相談し、本人に「このような行為や態度では訪問看護は撤退する」ことを伝えると、「もう言わない、しない」と約束されます。

しかし、ある早朝に、夫が首を吊っていると連絡あり、訪問すると、頸部に紐のような跡がありました。命は無事でしたが、夫婦で言い合いになり木刀を振り回したため、このまま2人でいると、危険と察し、夫の外来受診の日であったためタクシーで病院へ向かいました。その後妻も外来受診であったため別のタクシーで病院へ。ご夫婦が顔をあわせると言い合いになるため、看護師が別々に付き添いました。同時に保護課の担当者に連絡をとり、外来で待ち合わせ、妻は診察後に帰宅、夫はそのまま緊急ショートステイとなりました。

ある日、スタッフが妻の訪問をすると看護師に詰め寄り、受診時に一緒にいた看護師がお金を盗ったと脅すような言葉を連発されました。これまで、患者さんに寄り添い、毎日訪問して薬を服用しているか確認し続けてきましたが、信頼関係を保てないため、訪問看護の終了を告げました。すると管理者につかみかかり、暴言があり、このままでは危険であるため、警察を呼び対応していただきました。

今回、傷害事件にもなりかねなかった場面に一人で訪問したことは大変危険だったと思います。ハラスメントが疑われる場合は、まず管理部に報告し、ケアマネジャーや保護課に相談しながら、適切な判断を仰ぐ必要があると思います。管理者として、現場でのハラスメントの状況を把握し、対処方法を実践することで、スタッフが安心して働ける環境を作ることが大切です。

今回のように、根拠のないクレーム・無理な欲求・暴言・暴力等により訪問看護師が傷つき、追い込まれることがあります。そこで、対応策を職員に周知するために再度学習し、ハラスメントに対する相談窓口の明確化、発生時の報告や初期対応、事後対応等についてのマニュアルを作成しました。事前に対処方法を考えておくことでいざという時に、トラブルを最小限に抑え、予防策を立てることができます。また、暴力・ハラスメント行為が発生した場合に、患者状況の記録の徹底も重要です。

暴力・ハラスメントは、職員の尊厳や心身を傷つけるものであって、利用者に対する虐待と同様あってはならないものと感じています。

 

     

 ★ 当ステーションのスタッフです ★

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