人と動物の共通感染症について

人と動物の共通感染症とは

 人と動物の共通感染症とは、世界保健機構(WHO)では「脊椎動物と人の間で自然に行き来することができる病気又は感染」と定義しており、動物由来感染症やズーノーシス(ZOONOSIS)とも呼ばれています。交通手段が非常に発達したため、人・動物の国境を超えた移動が著しく増え、海外の病気の流入が容易になったことや、野生動物が希少ペットとして飼育されるようになったこと、また、ペットを室内で飼育する家庭が増え、人とペットの距離が近くなったことなどから近年、注目されるようになっています。動物から人に感染することで健康を害する場合があり、現在、世界保健機関(WHO)で確認されているだけでも200種類以上あり、よく知られる病気として狂犬病や鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)があります。

どういう動物から感染するのか

 近年、世界中で注目されているエボラ出血熱はコウモリの一種からサル(霊長類)などを介して、中東呼吸器症候群(MERS)はラクダから感染すると考えられています。東南アジア地域で見られる鳥インフルエンザも、飼育されているニワトリなどの鳥類から人に感染することが知られています。しかし、このような特殊な感染症だけでなく、日本でも日常的に見られる共通感染症として、ネコに引っかかれて発症する猫ひっかき病、ミドリガメやイグアナなどの爬虫類から感染するサルモネラ症、接し方によっては家庭のペットのイヌ・ネコが普通に持っている病原体で感染するQ熱、パスツレラ症などがあります。

感染経路

 動物から人に感染する経路は、大きく分けると動物から人に直接感染する直接伝播とダニや蚊などを介して感染する関節伝播があります。引っ掻かれたり咬まれたりして生じた傷口からの感染、動物に舐められたり動物や動物の糞尿を触ったりすることでの感染を直接伝播、蚊やダニなどを介して感染したり、動物の肉などを食べて感染したり、動物から排泄された菌が土壌や水系を介して感染するのを関節伝播といいます。

感染した際の主な症状

 発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などインフルエンザのような症状が出る感染症もありますが、先天性トキソプラズマ症のように、妊婦さんが感染すると妊婦さん自身には症状がなく生まれてくる赤ちゃんに症状が出るものもあります。潜伏期間も様々で、感染してすぐに症状が出るとは限りません。原因がよくわからない症状が続く場合、病院を受診するときに動物との接触歴(特に海外渡航がある場合)を伝えるとよいでしょう。

感染しないために気をつけること

 動物との濃厚な接触を避け、動物に触った後は手洗いに心がけましょう。動物が赤ちゃんや小さな子どもを舐めたり触ったりするのはよくありません。また、国内外問わず野生動物は大変危険です。引っ掻かれたり咬まれたりしないよう十分に気を付けて接します。ペットを飼育する方は、ペットの身のまわりを清潔にし、糞尿は速やかに処理するよう心がけましょう。また、予防注射や駆虫薬での予防を行ってください。

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