ドクター&ナースのつぶやき

令和7年12月号


 訪問看護におけるターミナルケア


楽らくサポートセンター レスピケアナース
亀谷 涼子

 病状が進行し、治癒することが難しくなったとしても、住み慣れた自宅で過ごしたいという願いを持つ方は少なくありません。訪問看護師は、その思いに寄り添いながら、最期のステージをサポートする役割があると思います。

 ターミナル期には、疼痛や呼吸困難、倦怠感などの身体的苦痛に加え、不安や孤独、死への恐怖といった精神的苦痛が表れます。私たちは、医師や介護職をはじめ、様々な職種と連携しながら症状の緩和を図り、安楽なケアを提供する事で穏やかな時間が送れるように支援します。時には、言葉にならない思いを汲み取り、ただ静かにそばにいることが何よりのケアとなることもあります。

 ターミナルケアでは家族支援も欠かせません。日に日に増大する介護負担や「自分のケアで本当に良いのか」という不安、死を目前にした悲しみを抱える家族に寄り添い、看取りまでを共に歩む姿勢を大切にしています。そして看取り後も、家族のグリーフケアを通じて心の整理を支援することが訪問看護の重要な役割です。

 近年は単身世帯も多くなり、中には、在宅サービスや家族・親族以外の助けを借りながら最期を迎える人もいます。がん末期で、本人の希望で、趣味仲間の知人宅で過ごすことになった人がいました。最初は身の回りの事が出来ていましたが、徐々に寝ている時間が長くなり、また身体的な苦痛も増えて行きました。体調悪化時の療養場所や治療の決断、苦痛緩和のための鎮静をどのタイミングで行うのか等、知人は、家族でない人の意思決定を迫られ、とても悩んでいました。その都度、本人を含めて話をして、意向に沿ったケアを行い、最期は知人とその家族に見守られながら亡くなりました。訪問中は、大切にしていることや、これまでの生き様を語り、時には気持ちが元気になるようにと、離れて暮らす子供が、趣味で愛用していたものを持参したり、その人の歩んできた人生を垣間見た時間でもありました。

 私は「看取る」ことは同時に「生を支える」ことでもあるということを、ターミナルケアを通して感じています。その人の思いや価値観、生き方を理解しようとし、心を通わせられるケアができた時には嬉しくなります。最期までその人らしく生きる姿に立ち会うたびに、看護の本質に触れているように感じます。訪問看護師として、これからも一人ひとりの人生に寄り添い、穏やかな最期を支えるケアを実践していきたいと思います。

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