令和5年度死体検案(基礎)研修会(ハイブリッド)Q&A
Q.
当院では救急外来で搬入患者が亡くなった場合、かかりつけ患者でなくAiで死因を特定出来ない時は、警察に検視を依頼することが多いです。しかし、明らかな病死で事件性もない(異状死でない)と判断した場合、検視の依頼は必要ないのでしょうか?検視は時間を要するためご遺族を待たせることや警察の方の労力などを考えると依頼すべきなのかどうかといつも悩みます。検視依頼の数も増えているとのことですしいかがでしょうか?
A.(久留米大学医学部法医学講座 教授 神田 芳郎 先生より)
Ai等を実施され死因が特定出来なかった場合であっても、先生が異状死でないと判断された場合は、医師法上の異状死の届出義務はないということになります。一方、法医学会のガイドラインでは死因が不明な場合は異状死と扱うとされており(学会の基準であり絶対的なものではありません)、また急性薬物中毒など外表検査やAiだけでは死因が特定できない場合もありますので、検視の依頼(すなわち異状死の届出)は必要ないとまでは断言できない状況です。
Q.
訪問診察を受けている方や配置医としている施設の方が亡くなられたとき、死亡24時間以内に診察しておれば死後診察をせず、死亡診断書を交付できるということになっていますが、死亡時刻を記入するときに悩みます。家族や看護師、施設職員からの情報で推定してよいとのことですが看護師、医療職でない家族や介護職員が死の兆候を確認できるでしょうか?家族や施設職員が医師の確認なしに死亡時刻を決めることに抵抗はないでしょうか?また、このようなルールがあるということを家族や施設の職員は知っているのでしょうか?
私は、死亡時刻は微妙な問題を孕んでいることもありますので、亡くなられた時に死後診察を行い、死亡診断書を書くようにしています。深夜に亡くなられた時には翌日に診察に行って死亡診断書を書かれる先生もおられるとのことですが、ご家族の心情を察するともやっとしています。このような場合は死体検案書になるのでしょうか?
A.(久留米大学医学部法医学講座 教授 神田 芳郎 先生より)
死亡時刻に関しては、最終診療から24時間以内の死亡であれば再度診察をしなくても(死後診察をせずに)死亡診断書が交付できることから、家族等の言で死亡時刻を推定するしかないと思います。しかしながら、私も先生がされておられるように、最終診療から24時間以内の死亡であっても、死後診察を行い、死亡診断書を書かれるというやり方が良いと思います。この行為自体何の問題もありません。死後診察を行い、診療継続中の傷病による死亡と判断された場合は最終診断の時期に関らず死亡診断書を作成することになります。ただし診療継続中の傷病以外の傷病で亡くなられた場合は死体検案書になります。したがって深夜に亡くなられて、翌日死後診察され(診療継続中の傷病で亡くなられた場合は死体検案書ではなく)死亡診断書を作成されるという行為に法的な問題はないと考えます。