第3回心のふれあい大賞作品集
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入賞作品「空は青」 どうして、こうなっちゃったんだろう。 こんな病気にならなければいけないほど、悪いことをした? 心の中でつぶやいてみても、事実を変えることはできない。半年前に片方だけのもやもや病と診断され、そのあとで脳梗塞を起こした。医者の言うことさえわからなくなったのは、四十四歳のときのことだった。「これは、何かな?」 先生は目の前にあった携帯電話を手に取った。「時計?」 悩みながらも、そう言った。多分、違っているのだろうな、と思いながらも、そうとしか答えようがなかった。「それじゃ、あれは?」 先生は壁にある時計を指さした。「電池…」 そこで、沈黙が流れた。「入院ですね」「そんな…」 着いて来た夫の言葉を遮ったのは、どこからともなく車椅子が現れたからだった。それに座ったときから、正真正銘の病人となった。 その前に、兆候はあった。二度、一過性脳虚血症を起こしていたからだった。 えっ? 何? 一瞬、頭の中が真っ白になって立ち尽くしたのは、半年前のことだった。すべての言葉が消えてしまって、すぅーという感じで自分という存在自体が何か底の方に吸い込まれていくように思えた。「おい、どうした?」 そう言う夫の顔もぼんやりとして、実態がない。しばらくその場に立ち尽くしたあと、「ううん、何でもない」と答えた。そのセリフが出たことに、自分自身が一番ほっとした。だけど翌日、また同じことが起きたのだ。近くの脳神経外科に行って、MRIを撮り、「もやもや病」と診断を受けたのだった。 もやもや病というのは、脳に栄養を送る太い血管が詰まって、不足した血液を補うように、まわりから細かい血管が発達する病気、のことだ。この血管が煙草を吐いた煙のように見えるこ一般の部 最優秀賞久留米市河野 桃子4

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