第3回心のふれあい大賞作品集
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⃝中高生の部 最優秀賞 ― 「心の医療・言葉の治療」 包まれていた。食べることは生きること。病気も快方へと向かうかもしれないと期待し、心の中に一点の灯りを点じた。 しばらくして、家族で病院へ行き病室のドアを開けると祖母の目は少し腫れていて、ぐったりとしていた。「おじいちゃんの容態が悪化してね。今から説明を受けるから一緒に聞いてほしい。」と話した。みんなで医師の部屋に向かった。「今日はつらいお話をしないといけません。体がもう栄養を吸収できる状態ではありません。延命治療についての説明と現在の状態についてお話しします。」と話し始めた。病気についてはゆっくりと分かりやすい言葉で話してくれたので、学生の私でも理解することができた。完治はできないという内容だったが説明が十分であると強く感じた。延命治療についても、どういった方法なのか、メリットやデメリット、延命治療をしないという選択もあるということを分かりやすく話してくれた。私達が感じた疑問には一つ一つ丁寧に言葉を選びながら返してくれた。そして最後に医師は、「私は患者やそのご家族の心に寄りそうことも治療の一つだと思います。不安に思うことがあれば何でもお話しして下さい。」と言ってくれた。とても心強かった。 言葉や表情はその人の心を写す。それが相手の心に伝わり冷たくも温かくもしてくれる。医師の言葉には祖父を最後まで責任もって看取ります。安心して下さい。一緒に支えていきましょうという心が伝わってきた。患者、家族、医師、皆がつながっているのだと安心した時、信頼という言葉が生まれる。 数日後、祖母は延命治療をしないと医師に伝えた。栄養を送る点滴さえも針を自分で抜いてしまい、日に日に衰えていた。早く体を楽にしてほしいと伝えた。医師は、「わかりました。そうしましょう。」と共感してくれた。辛い選択だったからこそその一言が祖母の気持ちを楽にした。 程無くして、祖父が亡くなった。安らかな表情だった。終末期医療とは患者の心身の苦痛を和らげ、穏やかに死を迎えることだと辞書にあった。祖父はよい終末期医療を受け命を全うできたのだと自信をもって言える。 人々は科学によって、医学を発達させ、たくさんの命が救われるようになった。医学とは素晴らしい学問である。 しかし、医学は患者という心をもった人間を相手にしていることを忘れてはいけない。私が体験したように〝言葉の力〟で心が癒され、救われるのだ。それはいつしか信頼関係を生み、皆が同じ方向を向き支え合う。ゆとりがない現代の医療だからこそ、心の医療を考えなければならないと感じた。11

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