第3回心のふれあい大賞作品集
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入賞作品「心の医療・ 言葉の治療」 息を切らし、病室のドアを開けると、人工呼吸器や点滴の管、導尿管などたくさんの管がつり下がり、頭や指先につながれている祖父が眠っていた。よく笑う祖父のやわらかな表情とは異なり、苦しそうな表情で顔は強張っていた。中高生の部 最優秀賞福岡市・高校2年居石 優輝 父は顔を下に向け、母は涙ぐんでいた。私も立ちすくみ、三人とも言葉をかけることができなかった。父が私の肩をとんとんとたたき祖父の側へ行った。手を握ると涙があふれてきた。私は涙を必死でこらえた。「頭の手術をしたので、今は眠っています。お辛いかもしれませんが、懸命に生きようとなさっているので、声をかけてあげて下さい。来てもらって喜んでますよ。」と医師が優しい表情で話してくれた。不思議とその一言が、心にすっと入ってきて、不安でいっぱいだった心が癒されたようだった。 体調を崩し、地元の病院に入院したと聞いてから数日後、看護師が朝の見回りで意識がなかった祖父を発見し、手術ができる病院へ緊急搬送された。硬膜下血腫だった。迅速な対応のおかげで、命は助かったが、高齢の祖父は体の負担が大きく、術後の管理が大変だと祖母が話してくれた。不安そうな顔で話す祖母の所へ医師が来て、「私達も全力を尽くし、サポートしていきます。不安な事があれば何でも相談して下さいね。」と話した。「ありがとうございます。」と返事をした祖母の表情や声は少し明るくなり、落ち着きを取り戻したようだった。医師の言葉は、患者である祖父はもちろん、家族も救われた。この病院なら安心だと素直に感じた。心強かった。 数日後、お見舞いに行くと、集中治療室から個室に移動していた。少し痩せた祖父は顔をくしゃっとゆるませ、「よく来てくれたね。ありがとう。」と小さくなった声量で話し、嬉しそうだった。 食事の時間は別室でみんなと一緒に食べていた。ほぼ液体状態の食事を祖父の口に運ぶ。「みんなで食べるとおいしく感じるよ。」と私に言った。時折、話が弾み笑顔に10

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