第2回作文コンクール入賞作品集
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入賞作品「ニコニコ先生」 私のひとり娘は虫に刺されてしまうと、夏の間はずっと腫れ上がったままになり、虫よけスプレーをしてても、余程おいしい肌なのか二才の夏から手足は、刺された跡でびっしりだった。 かわいい絵のバンソウコウを貼りたがる娘の気持ちとは裏腹に、その形の一般の部 優秀賞福岡市七熊 直美(46歳)まま湿疹が広がる敏感肌なので、市販のもので貼れるものは無かった。貼っても大丈夫なものと言えば注射の後に貼る一円玉サイズの味も素っ気もない医療用肌色テープだった。それを処方せん薬局より箱単位で分けてもらっては、ひしめく虫刺され跡に貼ると、さながら水玉模様を見ているようだった。 水玉の数は秋が来ると減って、冬には跡形もなくなってしまう。そして又、夏になると水玉を繰り返しては、病名も分からないまま娘は六才になっていた。 少し遠方だが、まだ行ったことのない皮膚科をみつけたので、せめて病名が判かればと思い、行ってみることにした。 診療室に入ると、柔和なお顔のご年配の先生がまずは笑顔で娘の頭を撫でて下さった。鑑定でもするかのような入念さで手足を見ると、優しく話し掛けてこられた。「かゆいかな?」 緊張気味に娘がうなずくと、私にも子供へ話すように尋ねられた。「これは夏だけかな? 冬になると良くなっちゃうかな?」 その言葉を聞いた途端、見抜いた凄さに驚きながらも、私はそれまで誰れにも言えなかった、いきさつをセキを切ったように話し始めてしまっていた。病名すら判からないのに劇薬を出されて、使用をためらう私に怒り出す医師もいたことや、何ヶ所も病院巡りをする罪悪感と無力感で追い詰められていたと不満をぶちまける私に、先生はうん、うんと頷きながら話を聞いて下さった。「これは小児ストロフルスと言ってね…」 先生の丁寧な説明もあっけに取られつつ聞いていた。病名が判かったことも勿論だったが、症状を言い当てられたことや、終始笑顔で診察されたのも、どれを取っても初めてで私は茫然とし8

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