第2回作文コンクール入賞作品集
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入賞作品「お命と握手の話」 二〇一二年十月三十日。あの若々しく元気だった母が、緩和ケア病院で、眠ったまま静かに旅立ちました。享年七十八。 脳腫瘍発覚から十一ヶ月足らずの事でした。 二〇一一年十二月九日。夕食時の様一般の部 優秀賞福岡市山野 以知子(59歳)子がおかしくなった母は、S病院に救急搬送され入院、緊急手術、放射線及び抗癌治療等で二ヶ月半、リハビリの為にH病院に転院し一ヶ月半、訪問看護を受けながら、自宅療養していた三ヶ月目に再発し、最後は、緩和ケアに四ヶ月と本当にたくさんの医療関係の方々にお世話になりました。 中でも、最初にお世話になったS病院の脳外科医で主治医のI先生は、とても印象的で一生忘れる事はできないと思っています。 初面談の時は、失礼ながら、こんなに若い先生で?と不安でしたが、説明を伺ううちに、先生の熱意と不思議な安心感を感じるようになり、I先生にすべてをお任せしたい! そう思うのに時間はかかりませんでした。 説明終了後に、先生に、我が家では、家族一人一人とも日々、一期一会という思いで始めた握手の習慣がある事をお伝えし、母の回診の度、又、私共家族ともお会いする度に必ず握手をして頂くようになりました。母は、初めからこのI先生が大のお気に入りで、お見舞にいらした方々にも「私の主治医がもの凄くいい先生で、命を助けてもらったとよ。しかも、若・く・て・イ・ケ・メ・ン・。」と、いつも自慢をしていました。 又、手術から六週間後、病院で迎えた誕生日の回診の時には、「先生、私、まさか誕生日が迎えられるとは思っとらんかったとよ。これも、すべて先生のお陰。感謝、感謝です。」と涙を流しながら、両手でしっかり握手。「それは、ヨカッた。でも、これは、Hさん自身の頑張りの力・でもあるとですよ。これからも、一緒に頑張りましょうね。ところで僕は明日が誕生日なんですよ。」 I先生の思いがけない話に「あら先生、私の方が一日だけお・姉・さ・ん・ね。」と、母は、満面の笑みで気持ちだけは、すっかり乙女になり私達をびっくりさせ、大爆笑となりました。 実は、この頃、放射線と抗癌治療が山場を迎えていて、髪は抜け、食事も6

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