第2回作文コンクール入賞作品集
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⃝一般の部 最優秀賞 ― 「ぼちぼち先生」 とても落ち着かせてくれました。私は笑顔で看護師さんとお別れをして、ドアの奥へと進んだのです。目覚めると手術が終わっており、時間の経過が信じられません。ですが夫の疲れ切った顔を見て、心配しながら長時間待ってくれていたのだと感謝しました。そして、医学が目覚ましく進歩し続けていることを感じたのです。 それから1カ月余りの入院中、病気と闘う患者、医師、看護師さんたちのさまざまな日常を目にしました。私の主治医は、笑顔を絶やさない気さくな先生でした。何日かして耳を覆っていたネットが取れると、毎日の付け替えが始まります。それは早朝だったり、消灯近くだったりと、さまざまでした。不思議に思って様子を見ていると、先生方のとても忙しい日常が分かったのです。「付け替えをしましょう」 先生が、毎日病室まで迎えに来てくれます。外来診察日には、早朝に。手術日には、長引いて消灯近く走って来られるときもありました。その間にも研究会や学生への指導、他の病院への出張や学会への出席などと多忙でした。それでも、一日も欠かさずに付け替えのための迎えに来てくださったのです。処置室ではベッドの寝起きに手を貸して、「大丈夫ですか」と声を掛けます。耳の治療はとても激痛を伴うのです。それでも「どんどん良くなっていますよ。耳も頑張っているね。立派、立派ですよ」。 先生の明るい声を聞いていると、痛みも和らぎました。早く家に帰りたいと言うと、「もう少しの辛抱ですよ。病気は焦ると治りが悪い。しかし、上手に付き合うと免疫力が上がり早く回復しますよ。まあ、ぼちぼち元気になりましょう」。 先生が優しく力づけてくれたのです。私は心の中で、彼のことを「ぼちぼち先生」と呼ぶようになり、心から頼りにしました。入院中は、病院で働く多くの方に励まされ教えられたのです。今まで元気な日常を積み重ねてきたことが、人生の宝物だったということを。 ある日、忙しい中、教授自ら退院許可を伝えに来られました。お礼を言うと、「患者さんが笑顔で退院することが、私たち医師の元気のもとですからね。おめでとう!」。 また大急ぎで、外来へと戻られたのです。 感動看護は本当でした。折れそうだった私の心は、すっかり元気になりました。今も病院では命と向き合い、患者の体とそして心をも支えようと頑張っておられる大勢の人々がいます。耳を澄ますと、ぼちぼち先生の忙しそうな足音が聞こえてくるようです。 私と一緒に病気と闘ってくださって、ありがとうございました。5

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