第2回作文コンクール入賞作品集
5/23

入賞作品「ぼちぼち先生」《医師と患者は異なる立場にいるが、意思の疎通さえうまくいけば一緒に病気と闘える》 これはある方の著書を読んで、感じたことでした。そして4年前の暮れ、私はこのことを実感したのです。 ある日、水道の蛇口から出ている水音が聞こえませんでした。耳鼻科で大学病院を紹介され、恐る恐る受診しました。両耳とも、真珠性中耳炎という難病とのことです。「早く、手術をした方がいいでしょう」 教授の説明を、人ごとのように聞いている自分がいました。何しろ生まれて初めての手術です。不安で涙がこぼれるばかりでした。この恐怖心は、今まで健康を過信してきた罰のように思えました。手術日は決まったのですが、2カ月ほど待たなくてはなりません。教授を頼りに他県からも大勢の患者が訪れるからです。この間はいろいろな不安で、心ここにあらずという状態の毎日でした。家族や友人たちが、何かと気遣ってくれました。 ドキドキで臨んだ術前検査日のことです。待合室で周りの人を見ると、どの人も無言で肩に力が入っているようでした。私だけではなく病院に来る患者は、皆緊張していることが伝わってきました。電光掲示板とにらめっこしながら、順番を待っています。そんなとき、遠くの壁に一枚のポスターを見つけたのです。そっと近づいた私は心に安らぎを覚え、何度も読み返しました。《折れそうな心まで支えてみせる 感動看護》 笑顔いっぱいの看護師さんの写真とともに、この言葉が書かれていたのです。支えてくださる人たちがいることが伝わってきました。私の落ち込んでいた心が、手術を頑張ろうという思いに変化し始めました。医療に携わっている大勢の方たちが、患者を元気にしようと頑張っておられることを感じたからです。 いよいよ手術の朝、病室まで主治医と看護師さんが迎えに来てくれました。車椅子を押しながら先生が、「手術は、何のこともありませんよ。あとは、ぼちぼち元気になりましょう」。一般の部 最優秀賞福岡市森 千恵子(67歳)4

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です