第1回作文コンクール優秀作品集
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入賞作品「二つの出逢い」「このまま、入院して下さい。病室に案内しますので、すぐに点滴を始めましょう。」 私は、妊娠三十週目の妊婦だった。いつもの妊婦健診のつもりで診察を受けると、そのまま緊急入院になった。 入院原因の病名は、切迫早産だ。正一般の部 優秀賞福岡市中村 沙世子(34歳)期産(妊娠三十七週目~)以前に、早産になりかかる一歩手前の状態だ。 私の場合、十分間の間隔で規則的な強い子宮収縮があり、いつ陣痛に変わり、早産してもおかしくない危険な状態だった。 着の身着のまま、点滴を繋がれ、いきなり、絶対安静の入院患者となった。 大部屋に案内された。私のプライベートスペースは、カーテンに囲まれた三畳ない空間だった。基本的にトイレと食事以外は、起き上がらず、寝たきりの生活だ。お腹の張りを抑える薬が入った点滴は二十四時間の相棒となった。 病棟看護師の中に、五十代ぐらいのFさんがいた。数人居る看護師の中で一際目立って、おっとりして、手際が悪く、不器用な方だった。 そんなFさんは、マイペースで要領が悪い私の母に雰囲気が重なり、親しみが湧いた。そんな目で見ていたせいか、私たちは、すぐに意気投合し、仲良くなった。私は母に看護してもらっているようで、安らぐ時間を見つけた。 妊娠三十三週目を目の前にした夕方、お腹がカチカチになって胎児の姿が浮き出るほど、子宮の強い収縮が始まった。息が詰まり、下腹部が痛み、今までにない緊張感がはしった。先生が部屋に来て、点滴の量を増やした。そして、これ以上状態が悪くなると、この医院では対応出来ない為、新生児集中治療室が完備されている大きな病院に転院することになると説明を受けた。 入院生活を耐えると覚悟を決め頑張っていた最中、この試練が一番辛かった。 点滴の量を増やされたが、状態は落ち着かず、不安な夜をむかえた。これ以上、安静にすることは出来ない。私に出来ることは見つからなかった。 やるせなさと悔しさと、点滴の副作用で自分の精神状態を制御できなかっ6

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