第1回作文コンクール優秀作品集
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入賞作品「ありがとう」「生まれますね。」 今までに三人の子どもを出産した私が、この言葉にこれほどまでに勇気づけられ、覚悟を決めることになるとは、想像もしていませんでした。 四人目の赤ちゃんが女の子であると教えてもらったその日に、家族会議で“笑羽”ちゃんと決定しました。子ども達が譲らなかった名前です。その時から“わらちゃん”は子ども達の妹として家族の真ん中に存在していました。 八ヶ月健診でのエコーにより、横隔膜ヘルニアという病気が見つかり、大学病院へ転院しました。横隔膜ヘルニアは手術すれば治る病気であるはずでした。18トリソミーという染色体異常でなければ……。 わらちゃんは18トリソミーでした。生まれてくることもできないかもしれない、生まれてきても生きられない……。 私自身にできることを探し続ける日々が始まりました。考えても考えても私にできることは何もありません。病名を聞いてから約二週間、「とにかく家族と一緒にこの小さな命を大事に守り続けよう」と過ごす毎日の中で「もう一度、これからの話を聞きに行こう。」と主人と病棟長のH先生に会いに行きました。 H先生は静かに向き合い、私たちの話をじっくり聞いてくださり、ゆっくり答えてくださいました。H先生の口から出る言葉は、厳しい現実ばかりでしたが、眼鏡の奥から見つめる目は、真っ直ぐ誠実でした。 そんなH先生から、破水し陣痛が始まりだした時かけて頂いたのが、「生まれますね。」 の一言でした。「わらちゃんに会えるんだ。」という実感で何も恐くなくなりました。 主治医のN先生も駆けつけてくださいました。検査入院の時から、いつも周りに穏やかな空気をまとい、「大丈夫ですかぁ。」と来てくださり、何だかほっとして「はい。」と答えてしまうような方でした。今回もいつも通り「大丈夫ですかぁ。」「はい。」と。 私たちの様子を気遣いながら、腰をさすり続け、しっかりと指示してくれた看護師のSさん。以前から知り合い一般の部 最優秀賞春日市松本 悠(36歳)4

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