第1回作文コンクール優秀作品集
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⃝中高生の部 優秀賞 ― 『おいしやさん』への手紙 なことを聞いたって、お姉ちゃんを嫌いになったりしない。そう言いたかったのに声にならなかった。今までにそれでお姉ちゃんを避けた人がいたということを聞いた。そのことが、私は悲しかった。 七夕のことを思い出したのは、短冊が配られた時だった。私は迷わず、願い事を書いた。『おねえちゃんがしにませんように』と。短冊を見て回っていた先生は、私の短冊を見て「お姉さん、病気なの?」 と聞いた。私が小さく頷くと、先生は慰めてくれた。その時、お姉ちゃんの優しい手の感覚がよみがえった。『やっぱりお姉ちゃんが一番の慰め上手だ』と思って、私は少し泣きそうになった。 お姉ちゃんの病院に行きたい、と私は言い張った。母に叱られても、友達とケンカしても、静かに頭を撫でてくれる温かい手はない。そのことは、私にとってひどく辛いことだった。だから、私は手紙を書いた。お医者さんに『お姉ちゃんを家に帰してほしい』と伝えるために覚えたての読みにくい文字で、自分の気持ちを精一杯伝えようとした。誤字を訂正せず、手紙の一部を抜き出すと、こんなことが書いてある。『わたしが、おねえちゃんのめんどおおみます。ずっと、ておはなさないです。ごはんとか、おふろやといれのおせわもします。だから、おねえちゃんをかえしてください。』そんなことが書いてある二枚の手紙。私はそれをお医者さんに渡した。お医者さんは、私の手紙をその場で読むと、私の頭をくしゃっと撫でた。「お姉ちゃんが大好きなんだね。」 そう言われて私が深く頷くと、「早く家に帰れるように、お姉ちゃんも先生も頑張るからね。」 お医者さんは優しくにっこりと笑ってくれた。家族に隠れて手紙を渡した私は、お医者さんに話を聞いた母に困ったような顔をされた。でも母は、その後すぐに「ありがとう」と抱きしめてくれた。母の腕の中は、お姉ちゃんの手と同じように温かかった。 それからしばらくして、お姉ちゃんは退院できた。お姉ちゃんの退院の日、私は病院に行って、お医者さんに「ありがとう」と言った。お医者さんの反応は覚えてないが、きっとあの時みたいに優しい顔で笑ってくれたと思う。 お医者さんはすごい。私の大切な人を元気にして家に戻してくれた。あの優しくて頼もしい笑顔を、私は一生忘れないと思う。13

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