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⑵ 勤務医のつどいともに語ろう、ともに考えよう、ともに行動しよう隊員も合流し、総勢5名体制で業務を開始した。業務内容は日本DMAT事務局、他県DMAT調整本部との連携、県内DMATの派遣調整と熊本県からの傷病者収容の際の搬送先、搬送手段の確保、県災害対策本部への医療面での支援である。建物崩落の危機にある病院から入院患者を100人単位で避難させるミッションが複数計画されたことを確認し、福岡県内にも収容するべく、主要な病院に連絡を取りながら、一次収容施設として福岡空港内自衛隊春日基地にSCU(Staging Care Unit:安全に患者搬送ができるよう安定化を図る簡易施設)の立ち上げを決定した。県を通して自衛隊春日基地に立ち上げを依頼したが、これまで複数回訓練を行っていたので、東日本大震災の時と違い、スムーズに快諾していただいた。SCUに一次収容した傷病者の、その後の病院への搬送についても福岡市消防局に依頼し、快諾を得た。また県内DMATに対して、メンバー表を確認しながら現地派遣組、福岡空港SCU組に分けた。このような情報や現地の病院被災状況、福岡県内の空床状況はふくおか医療情報ネットやEMIS(Emergency Medical Information System:広域災害救急医療情報システム)から逐一入手した。最終的にDMATを介した傷病者の県内への受け入れはなく、SCUで医療活動することはなく、福岡県DMATとしての活動を終えた。今回の活動でうまく行ったところもあるが、新たな問題点も見えた。良かった点は、県庁内に初めてDMAT調整本部を立ち上げ、医療指導課と連携できたこと、福岡空港SCUの立ち上げがスムーズにできたことである。問題点は、県庁の災害対策本部は狭く、災害医療担当者が入るスペースもないこと、災害対策本部内に県内の医療機関、救護班を担当する部署や他県にはある医療災害対策本部がそもそもないことである。また福岡県医師会内にも災害対策本部を立ち上げることになろうが、県との密な、時差のない情報共有のために、災害医療を理解した人材がリエゾンとして県庁内に常駐しておく必要があり、そのための人材育成も喫緊の課題である。自律訓練法は欧米などで広く普及している催眠療法を応用した自己催眠の一種で、不眠症、高血圧、緊張型頭痛、さらには不安障害や外傷後ストレス障害(PTSD)にも有効で、当院では主に心療内科の患者さんに対して集団治療教室を開催し治療をおこなっています。この自律訓練法を誰にでも簡単にできるツールとして、以前勤務していた済生会福岡総合病院でDVDを作りました。これは5年前の東日本大震災の被災者の医療支援を目的に作製したもので、避難所を中心に約700枚を無償で配布いたしました。そのDVDを今回の熊本地震の医療支援にも役立てようと思い活動を計画いたしました。当院の医師、看護師、臨床心理士らと済生会福岡総合病院の臨床心理士が協力し、4月30日と7月2日の2回に分けて熊本県益城町の避難所を中心に車で巡回いたしました。数多くの倒壊した家を目の当たりにし地震の激しさを改めて実感しました。1回目(4月30日)は、熊本市・益城町の避難所4か所(避難者の合計約3000人)を巡回し、各避難所で個別訪問をおこないDVDを配布(合現在、本邦では災害が発生したら迅速にDMATが被災地内へ入り、被災地の災害医療支援を行う体制が定着してきました。熊本地震においても九州管内はもとより全国からDMATが参集し多大な貢献がなされました。当大学病院からもDMATを14日の余震後と16日の本震後に1隊ずつ派遣しています。計70枚)すると共にDVDの再生プレーヤーも1台ずつ設置しました。2回目(7月2日)の訪問では、益城町の避難所6か所(避難者の合計約1300人)を巡回し、DVDを個別に配布(合計270枚)すると共にDVDプレーヤーも設置しました。特に2回目は事前に避難所と連絡を取り、3か所で自律訓練法の集団教室を開催し合計31名が参加されました。避難所での生活は想像以上に過酷な環境で、身体面だけでなくメンタル面のケアも必要と感じました。1回目と比べて2回目の訪問では避難者の絶対数は半数以下に減ったものの、長引く避難生活を強いられている人が多く残されている実態が明らかとなりました。今後の生活や余震に対する不安と過酷な避難生活で眠れないと訴える方が数多くおられました。短時間ではありますが、個別に訪問した際に悩みや苦労を傾聴し共感することで、感謝の言葉や笑顔が見られ個別訪問の重要性を実感いたしました。また3か所で開催した自律訓練法の集団教室では、初めて体験した自律訓練に多少戸惑いがみられたものの、終了後には「気持ちが軽くなった」などの感想が述べられました。またお互いの悩みや苦労を語り合う場面がみられ避難所でのコミュニティーの場の提供にも役立っていると感じました。今後もこのDVDを有効活用して頂き、一人でも多くの方の心の癒しにつながればと思う次第です。更に当院は高度救命救急センターを有する災害拠点病院でもあり、今回は熊本県の隣県で、熊本市から最も近い大学病院でもありました。特に本震後は、熊本赤十字病院や県庁で活動していた他病院のDMAT隊員から「熊本赤十字病院は患者が溢れかえっている!」「100人単位で患者受入を依頼するようになるかもしれない・・・」などの情報が入ってきたため、当院の災害対策本部を立ち上げる中でのこの情報に、久留米大学病院として最大限の受け入れ態勢を構築しなければならないという認識が加速されたのは当然のことでした。緊急連絡網を使って職員の招集を行い、16日の朝8時の時点で医師62名、看護師40名、その他職自律訓練法のDVDを活用したメンタル支援活動 済生会飯塚嘉穂病院 副院長土田 治被災患者受入態勢構築の重要性 久留米大学病院 高度救命救急センター山下 典雄

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