勤務医のつどい 第50号
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ともに語ろう、ともに考えよう、ともに行動しよう 「今も相変わらず忙しくて大変ですか?」という質問を時々受ける。「そうですね、大変といえば大変ですが、なんとかやっています。」と答えている。 産科医療危機や母体死亡事件がマスコミで報じられてからおよそ7年が経過した。当時、過酷な勤務のなかでも使命感をもって笑顔で働く産婦人科医の姿も報道されていた。幸か不幸か、新たな事件が起きないため世間一般で話題となることは少なくなっている。それらの問題の根底にあったのは産科医の不足であったはずだ。産科医は増えたのだろうか? 厚生労働省の届出医師数調査によれば、産婦人科医師数は2006年からの6年間で888名増加している(増加率8.8%)。しかし、同期間での医師総数が10%増加したことに比べれば低率で、分娩取り扱い施設における産婦人科医師の増加率は7.2%とさらに低率であった。医師数の推移を、より若手の動向を反映する日本産科婦人科学会入会者数でみると、2010年度をピークに減少している。男女構成をみると、2002年度以来、概ね60%を占めていた女性医師の割合は2010年度以降減少している。これらのデータをまとめると、産婦人科女性医師の増加により産婦人科医は増加していたが、ここ数年では女子学生が産婦人科医になるのを敬遠している傾向にあるということになる。 2007年のデータであるが、日本産科婦人科学会の男女共同参画委員会の調査によれば、経験年数11年目の女性医師のうち、20%弱は産婦人科を辞め、50%以上は分娩業務から離れている。その調査において11年目での子持ち率が80%であることから、医師自身の妊娠・育児経験が産婦人科勤務に役立つどころか、むしろ妨げとなっている可能性が指摘されている。 当院産婦人科では2012年、12名の勤務医のうち女性医師4名がすべて妊娠し、同年冬から2013年春にかけて産休・出産となった。個人的には喜ばしいことではあるが、診療体制の維持が困難となった。時間差は生じたが、幸いなことに大学病院からの医師派遣でなんとか維持できている。 妊娠中や育児中の女性医師に対して、勤務時間の工夫や院内保育所の設置などの就労環境対策がなされていないと将来的には再び産科医師不足が顕在化することになる。 小児の救急医療には、外来や地域の医療機関で対応可能な「小児初期・二次救急」、生命の危険があり、緊急の対応が必要な「小児救命救急」の2つの側面があります。 前者については、核家族化・女性の社会進出・少子化・育児不安などに起因する夜間の救急受診の増加と、それに伴う小児科医の疲弊が問題となっていました。その対応として、小児救急電話相談事業(#8000)、急患センターや輪番当直制の整備などが進められています。このような体制整備とともに、個々の診療では、子どもの診療だけではなく、受診行動の根本にある、保護者の不安・心配への配慮が小児の救急初期診療では求められています。また、今後、緊急度から診療の優先順位を決めるトリアージや、増加する虐待への対応もより重要な課題となってくると思われます。 一方、後者の小児救命救急・集中治療は、小児専門病院、救命救急センターはじめ、大学病院・基幹病院小児科など様々な施設で行われています。しかし、近年、我が国の1~4歳の死亡率が先進国の中で高いことや、小児一般病棟で多くの重篤な小児の診療が行われていることが明らかになり、重篤小児救急患者に対する診療体制の整備が強く求められるようになってきています。このような重篤な小児は、海外ではPICU(小児集中治療室)に集約化して治療を行うことが予後を改善することが以前より示されており、その整備が進んでいます。しかし、我が国では、救急患者を受け入れるPICUは極めて少ないため、平成22年度より厚生労働省は「小児救命救急センター運営事業」を開始し、重篤な小児救急患者に対する救急・集中治療を行う施設に支援を行っています。 当院でも、従来年間約250例の小児がICUに入室し、人工呼吸はじめ、急性血液浄化、血漿交換、体外補助循環などを行っており、さらに小児救急医療を充実させるため、今年5月、6床のPICUを設置しました。また、小児救命救急センターを開設し、全国では6番目、大学病院救命センターとしては初めて、指定を受けました。今後はなお一層、福岡県はじめ北部九州地域の医療機関と連携を深め、重篤な小児患者の診療の充実をはかり、子どもたち、保護者、医療者のすべてが安心できる小児救急医療体制の一翼を担わせていただきたいと思っております。周産期救急の現状と課題:産科医は不足しているのか?北九州市立医療センター 総合周産期母子医療センター 主任部長 髙島 健小児救急医療の現状と小児救命救急センター九州大学病院救命救急センター 助教 賀来 典之勤務医のつどい福岡県医師会 勤務医部会福岡市博多区博多駅南2丁目9番30号vol. 50発行日 平成25年10月10日・THEME・救急医療の現状⑴

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