勤務医のつどい 第48号
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ともに語ろう、ともに考えよう、ともに行動しよう 医療は生と死の間の生業です。我々の全てが診療行為に関連した死亡事故に遭遇する危険があります。突然、深刻な状況に直面した医師が警察の取り調べを受けることは辛いことです。医師自身が、診療内容を冷静に省みて、因果関係を解きほぐし、無辜を証明することは困難です。そこで、厚生労働省は第三者が詳細に死亡の因果関係を検証する「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を立ち上げました。御遺族が剖検を承諾してモデル事業に登録すると、警察への届け出が免除されます。当該病院は、事後、院内事故調査委員会を開催し、調査報告書を提出します。ところが、相談相手も乏しい診療所や中小病院が剖検の承諾を受け、院内事故調査委員会を経て、調査報告書を作成することは難しいことです。その結果、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」への参画は大学病院と大規模病院に著しく偏り、中小病院の参画は稀で、特に周産期の母体死亡例の多くが司法解剖に委ねられました。これでは、中小病院の診療関連死では、遺族は死亡に至った過程を詳細に知る権利を失い、医師は自らの診療の妥当性を証す機会を逃すことになりかねません。当然のことながら、具体的で実のある予防策を立てることも難しくなります。残念なことに、医療機関の形態や診療領域で医師の立場も患者の権利にも差異が生じかねません。 そこで、福岡県医師会は本邦初の試みとして、当該医療機関に医師と看護師等で編成された調査分析支援チームを派遣し、院内事故調査委員会を開催した上で、調査報告書を作成し、「モデル事業」への参画を支援いたします。 (担当理事:上野 道雄)〈連絡先〉 福岡県医師会事務局 TEL 092-431-4564 福岡県メディカルセンター TEL 092-471-8599 九州大学小児外科は1976年に診療科、1979年10月に本邦初の国立大学小児外科学講座として誕生し、今年で33年が経過しました。現在、スタッフは教授1、准教授1(保健学科)、講師1、助教5です。小児外科医の育成にあたり、外科医として広く臓器を扱える「The Last General Surgeon」、さらに小児医療全般をひろくカバーしつつ探究心を有する「リサーチマインドをもったグローバルな小児外科医」を目標としています。教室の手術例数は年々増加し、今年は580例程度(うち新生児手術50例)になりそうです。関連病院は福岡県は筑後地区以外の全域、佐賀県と大分県と愛媛県の全域、宮崎県と山口県の一部をカバーしています。また教室出身者が新潟大学、京都府立医大、筑波大学の小児外科の教授に就任し、全国の小児外科の卒前教育および小児外科専門医の育成に貢献しています。 教室には6つの臨床・研究グループがあります。1周産期新生児栄養代謝グループ、2小児腫瘍グループ、3肝胆膵・移植グループ、4消化管機能・内視鏡手術グループ、5小児泌尿器グループ、6日常疾患グループで、新生児外科では横隔膜ヘルニアや食道閉鎖や腸閉鎖、腫瘍では神経芽腫、ウイルムス腫瘍、肝芽腫、肝胆膵では胆道閉鎖、胆道拡張症、肝臓移植などが代表的で、内視鏡手術は虫垂切除と女児の鼠径ヘルニアは全例内視鏡手術を実施しており、年々適応を拡大しています。小児泌尿器は低侵襲治療に積極的に取り組み、VURは膀胱鏡下Deflux注入療法が、水腎症は腹腔鏡手術が標準術式になっています。また新生児や乳児の手術では皮膚が進展しやすいことを利用して、従来ある皺を切開する腋窩皺切開や臍部皺切開により、ほとんど傷の目立たない手術が可能になってきました。 教室のモットーは「わ」で、他の診療科や医療スタッフとのチーム医療の「和」、患者さんを中心に組み立てる「輪」、医療の冠たる国としてアジア諸国に貢献する「倭」です。 約5年前に北九州市戸畑区に勤務医として大学の医局より赴任しました。卒後4年目であり何も分からない状況でありましたが、5年間も同じ地域で仕事をしていると、多くの地域の先生方と顔見知りになることができ、その先生方から非常に貴重な症例を紹介して頂くことができました。当院の特色として救急医療、癌治療を中心に地域医療を担っており、common diseaseがほとんどを占めますが、その中に前述の通り非常に貴重な症例を経験することが多々ありました。世界で2例目の症例や、日本において数例しか報告のない症例もあり、これらの症例から多くのことを学ぶことができました。この様な症例に出会うとやや不謹慎かもしれませんが、大変心踊らされます。 勤務医の生活を振り返ると忙しい毎日に振り回され、何となく治っていく症例がありますが、稀な症例をきちんと拾い上げ、それを掘り下げて考察し学会や論文として世の中に発信していくことは臨床を中心とする勤務医の使命の一つではないかと思います。 また私は当院の医療パスにも関わっていますが、地域連携パスの作成にも関わらせてもらいました。これらを整備し、地域の先生方と情報を共有しながら共に医療を行っていくことは、その地域の医療の質の向上にも繋がっていると考えています。このような事は大学病院とは異なる地域の中核病院だからこそ成し得ることが可能であり、これらを支えるのも勤務医の大事な仕事の一つと考えています。当然、勤務医一人ではこのような仕事は前に進みませんが、地域の先生方および病院のスタッフの力を借りて少しずつ発信(前進)できればと思います。 最後に、勤務医は多忙を極めており、じっくりと机に向かう時間は本当に限られますが、勤務医だからこそ発信すべきことはたくさんあると思います。少しずつでも私達勤務医が頑張ることで地域のまたは日本の医療が向上していくことを願ってやみません。福岡県医師会から●──────────●福岡県医師会の診療行為に関連した死亡事例への支援体制若手勤務医からのメッセージ大学医局の動向勤務医だからこそ発信すべきこと「わ」を以て尊しとなす田口 智章九州大学 小児外科酒見 亮介戸畑共立病院勤務医のつどい⑶

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