勤務医のつどい 第48号
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ともに語ろう、ともに考えよう、ともに行動しよう 消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌)、乳癌の治療をしていると、少なからず切除不能な患者や転移再発を来たした患者に遭遇する。終末期医療を考えるにあたり、食道癌、胃癌は切除不能・再発の場合比較的速く終末期になるが、大腸癌、乳癌は切除不能・再発であっても薬物療法の発達により本当の意味での終末期になりにくい。担癌状態で2年、3年と化学療法を続けながら普通に日常生活を送っている状態を終末期と言えるだろうか。癌の状態としては根治不能=末期と考えるが、生命に関しては末期ではない。治療法の発達、とりわけ薬物療法の発達で終末期の判断が難しくなっている。 このような現状を考えると、治療中から緩和治療を積極的に行ない少しでもQOLを高く保つようにすることが大切と考える。癌による疼痛対策は言うまでもないが、化学療法による副作用対策も十分に行いながら治療にあたる必要がある。大腸癌、乳癌の患者とは、もう治らないと告知した後、数年間付き合って行かないといけない。患者に「治療して長く生きていれば新しい薬が出て治療法が増える」と励ますこともある。 ただ、治療により予後が延長しているのは事実だが、根治不能=死期が近い、を意味することに違いはない。治療経過中いつかは必ず悪くなる時期が来る。本当の意味での終末期に入ることになる。症状緩和のために病院に入院することが多いが、多くの患者は自宅に帰りたいと訴える。しかし、在宅で終末期を迎えることは家族の協力がないと難しい。家族にとって終末期の在宅には、家族のうち誰かが仕事を休み24時間付きっきりで介護しないといけない、長引くと疲弊して自分達の生活が成り立たなくなる、などのイメージがある。当院では患者の希望を叶えるために、地域の医療機関や看護サービス、薬局サービスなどと連携して終末期在宅ケアへの移行の手助けを行っている。退院前に家族と十分に話しあうことで、医療面からのサポートは問題なく受けられ、バックアップ病院も確保されていることを認識してもらっている。うまく在宅に移行できた患者、家族は終末期を自宅で過ごせたことに満足されることが多い。しかし、家族の協力、犠牲があることに変わりはない。 終末期に入れるホスピスが絶対的に足りない現状では、病院で最後を迎えることが多いと思う。患者、家族にとって最後に満足してもらえる病院でありたいと思う。 高齢化が世界最速で進んでいる日本では救急車出動件数が年々増え続けております。今後少なくとも高齢者人口が増え続ける2025年までは救急医療の需要は増加するでしょう。現在でも救急医療は救急患者増と救急収容能力のバランスが崩れ、崩壊の危機にあります。本当に救急医療を必要とする患者に救急医療のマンパワーを最大限有効活用するためには、「予防救急」という概念が必要になります。「予防救急」とは、怪我や生活習慣病を予防することにより、救急で病院を受診しないですむようにしようとする取り組みです。在宅や施設で看取りを希望する人を看取れる社会システム作りも含まれます。 飯塚病院では、「病気の予防」と「医療機関の上手なかかり方」をテーマとして、住民を対象に「地域医療サポーター」を養成しています。現在412名の「地域医療サポーター」が誕生し、少しずつ住民の意識改革が進んでいます。この活動前後で当院救命救急センターを受診する患者数が1割程度減少(5万人から4万5千人程に低下)し、特に夜間のクレーム対応が減少していることを実感しています。いわゆるコンビニ受診が減少したものと考えています。この分だけ救急現場の疲弊感が軽減でき、新たなドクターカーの導入に結びついていると思います。 2012年9月8日飯塚市で開催した第31回福岡救急医学会では、「予防救急」と「チーム医療」を進めるということをメインテーマとしました。特別講演ではNPO法人ささえる医療研究所理事長村上智彦先生に財政破綻した夕張市での医療活動についてお話頂きました。お年寄りのワクチン接種や口腔ケアなどの疾病予防、終末期の看取りを行うことにより、救急車の出動件数が半減しているとの報告がありました。シンポジウムでは、「予防救急をチーム力で進める」と題して、福岡救急医学会、行政、医師会、病院、救急隊、そして住民が何をすべきかを討論しました。予防救急は今後も学会委員会活動として継続的に取組むことになりました。 その人の生き様を支援していくためには、健康寿命を延ばし、寝込まない工夫、終末期の迎え方を啓蒙していくことが重要です。限りある救急医療システムを最大限活用し、地域の方々が困ったとき安心して救急病院を受診できるように、皆さんと知恵を絞って対策を打っていきましょう。予防救急と地域医療サポーターを通して飯塚病院 副院長兼救命救急センター所長 鮎川 勝彦癌の終末期医療大牟田市立病院 腫瘍外科部長 津福 達二⑵勤務医のつどい

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