勤務医のつどい 第48号
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ともに語ろう、ともに考えよう、ともに行動しよう 終末期医療はターミナルケアなどと同義で使われてきたが、今日ではこのような対応は病気の診断時から提供されるべきであるとの考え方から、疾患や病期に関わらず苦痛を緩和する「緩和ケア」という言葉が広まった。 小児の緩和ケアは「生命を脅かす疾患を持つ子どものための、身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな要素を含む積極的かつ全人的な取り組みである。それは子どものQOLの向上と家族のサポートに焦点を当て、苦痛を与える症状の管理、レスパイトケア、終末期のケア、死別後のケアの提供を含むものである」そして「三次医療機関でも、地域の診療所でも、そして子どもの自宅でも提供し得るものである」と定義される。ここで生命を脅かす疾患とは一般的に「19歳までに発症し、50%以上が成人期(40歳)に達するまでに死に至る症例」とされ、以下の4群に分類される。 ①治癒の可能性がある病気だが、治療がうまくいかなくなったもの:小児がん、先天性心疾患など ②集中治療によって生存期間を延ばしうるが、成人までに死亡すると思われるもの:デュシャンヌ型筋ジストロフィーなど ③進行性で治癒につながる治療法がなく、概ね症状の緩和に限られるもの:先天性代謝疾患など ④非進行性だが脆弱で、呼吸器感染症などの合併症で早期に死亡してしまうもの:重症心身障害児など 成人と異なり、小児緩和ケアの対象疾患は多岐にわたり、子どもの年齢による死に対する理解度や意志表示の能力、家族の思いや役割も様々である。また子どもを亡くすことは家族や医療者にとり峻烈な体験となる。重篤な疾患を抱える子どもの医療方針を決定することは、一般化できる正解のない非常に難しい課題である。公正で一貫した治療方針を決定するためには、その子どもの視点に立ち、その子どもにとっての最善の利益とは何かを問い続ける医療的・倫理的・法的な思考のプロセスと、子どもを中心に据えた、家族と医療スタッフ間でのコンセンサス形成のためのコミュニケーションが何よりも重要である。 我が国では本年度、がん対策基本法の見直し案の中でも小児の緩和ケアの普及の重要性が指摘された。これからは、欧米の理念・システムから学びながらも、倫理・文化的背景、医療保険制度・死生観・親子関係などが異なる日本は、自国に合った小児緩和ケアを確立していかなければならない。Scienceの要素の確立、医療者への教育の普及、多職種から成るチーム編成、組織を越えた連携システムの構築などが必要である。 小児緩和ケアの視点が広まることにより、病や障害をもつ子どもたちが限られた時間を尊厳と夢をもって生きていくことを支える質の高い小児医療が発展していくことを願ってやまない。 終末期における医療のあり方は、患者の病態、本人の意志、家族の思いを含め医療側の方針確立に密に関連し実際にはかなり複雑である。基本は患者のQOLを考慮しbest supportive careとする事である。対象は“癌”か肺炎や心疾患、脳血管疾患といった“非癌”に大別される。癌による死亡10%−15%に比し非癌は約40%を越える。癌においては予後は予測出来るが、非癌においては終末期を判断するのは困難である。疾患によりその経過は異なり、呼吸や循環機能の低下により死期の近いことが判断される。ゆえに癌では週単位、月単位の予測可能に比べ非癌では死を目前にしたときしかわからない。処置としてQOLの維持を伴う生命維持が行われる。癌に対しては主として疼痛緩和と栄養・輸液、非癌では基礎疾患により異なる。心疾患では水分制限、肺炎では抗生物質投与、酸素吸入など考慮される。また、腎不全に対する透析導入や透析患者における心肺機能低下による透析中止など難しいところがある。非癌患者群は慢性の経過をたどる事が多く、臓器不全や退行性変性による細胞壊死や神経変性が進行して次第に死に至る。日本老年医学会は2011年に胃瘻造設を含む経管栄養や気管切開、人工呼吸装置などの適応は慎重に検討との立場を表明した。これは医療側には受け入れられる。緩和医療学会では症状に応じて輸液を行わなかったり又は1日500mlに絞ると推奨している。しかし輸液量は適宜に調節し、浮腫・腹水・胸水に対しては利尿剤使用もよい。たまには状態の好転をみる事もあり、その後口腔リハビリにより意識の改善、QOLの向上をみた例もある。蘇生CPR(cardiopulmonary resuscitation)又はDNR(do not resuscitate)の意思確認も重要である。ほとんど本人の意思が確認できない事が多く家族により同意は得られる。その際心肺蘇生や人工呼吸装着は望まないが、点滴、酸素吸入など出来るだけの事はして欲しいという。患者の尊厳を考慮して又家族の悲嘆、畏れ、強い思い入れを考え適時に頻回な説明が必要である。家族の強い思い入れやいろいろな愁訴も医療側にとってのストレスにもなる。患者の生命を救う事を使命としている医療者にとって治療行為の中止は決定しづらい。現に終末期医療についてはCecil Textbook of Medicineの2300頁中僅か3頁しかない。1 日本の内科学や今日の治療指針には皆無である。今後は多くの意見のコンセンサスを得、ガイドラインの作成に期待したい。 1. Milch RA,Dunn GP:Bulletin of American College of Surgeons,82(4)15,1997終末期医療を考える ~End-of-life care~北九州中央病院 副院長 小野 二六一小児の終末期医療 ~小児緩和ケアの概念とこれから~福岡東医療センター 小児科 笹月 桃子勤務医のつどい福岡県医師会 勤務医部会福岡市博多区博多駅南2丁目9番30号vol. 48発行日 平成24年11月10日・THEME・終末期医療を考える⑴

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